芸術家とイノセンス


際立った天賦の才を持っている在NY日本人などをインタビューしていると、50歳を過ぎた人なのに、まるで13歳くらいの少年や少女と向き合っているような錯覚を起こすことがある。けっして幼稚というのではなく、何にも損なわれない白くて強い光を放つ特別な石を目の前にしているような感じがする。イノセンスというのはそういうものなのだろうか。子供の頃の純粋な目や感受性をもったまま大人になるということは、現実の社会では不可能なのではと思っていたけれど、そういう人がニューヨークには不思議と存在できているのがすごい。幼い頃から個性を伸ばす教育を重んじているアメリカならではの現象かもしれない。


アメリカというのは面白いところで、貧富の差が激しい中、金や物質的な成功を命がけで求める人々が、ニューヨークなどの都会にはあふれている一方で、天賦の才能をぽわんと維持したまま、何とはなしに自然体で生きている人もなぜか存在できてしまっていたりする。これがもし日本だったら、若いうちに叩かれてつぶされてしまっているか(または散々な目に遭っているか)、逆にマスコミなどで必要以上に派手に取り沙汰されてスポイルされてしまっているか、またはそういう煩わしさから逃れるために、どこかに雲隠れするしかないのではと思ったりする。日本の社会でうまくバランスを取りながらマイペースで生きるというのは、そう簡単にできることではない。「自由」というのはすごいことだなと、ニューヨークに生息するある種の人々を見ていて、今さらながらに実感したりする。


アメリカの大らかさと、ニューヨークの自由な気風が育むもの。そういうものを最近、少し再認識しつつある。


(在NY日本人のインタビュー掲載記事はこちら。)