ヤンキースの優勝

ヤンキースの9年ぶりの優勝シーン、長い間悶々と勝てずにいた彼らのこの数年の試合を観ていただけに、何とも感動してしまった。前回、2000年に優勝した時は、私もちょうどニューヨークの音楽シーンの取材に駆け回っていた時期で、あの年の(9・11が起こる前の)ニューヨークの街は、〈最後の花火〉という感じで、街のどこもかしこも遊園地のように賑やかだったのを思い出す。もちろん、私自身がNYを知るようになって1年目の興味津々の時期だったからというのもあるだろうけれど。

長い間の低迷時期を超えて、再びワールドシリーズで優勝したヤンキースのこれまでの忍耐と今回の快挙は、もろもろの災難と困難を乗り越えてニューヨークが再び元気になる日が来るであろうことを象徴しているようで、とても嬉しい。他チームの元気な若手の選手に比べて年齢も結構上で膝の故障まで抱えていた松井選手が、こうして最後の数ゲームで大活躍したのも、何か奇跡を見ているようで凄かった。やはりニューヨークは〈奇跡が起こる場所〉なのかもしれない…という感覚を久しぶりに思い出したり。何にしても、昨夜は新年を迎える大晦日みたいに凄かった。ニューヨークに再び花火が戻ってきたのを見たような。

ニューヨークにいても日本人であることで人種差別をあまり受けずにいられるのは、こうした松井選手のような在米日本人の活躍のおかげかもしれないと感じることがよくある。松井選手が活躍した日の翌日は、スーパーの肉売り場のカウンターのおじさんが日本人の私を見るなり満面ニコニコになるし、その他にも日本人の仕事に対する集中力の素晴らしさみたいなものを、松井選手の活躍を見て理解する人もたくさんいるのではないかと思う。文化や音楽の分野でも、村上春樹灰野敬二の作品が好きなアメリカ人と話していると、他のアメリカ人に比べて日本人に対する理解と尊敬の気持ちが深いのを感じる。アメリカという国で、人種差別を超えて、さらに多人種であるにも関わらず尊敬を得られる…というのは、凄いことだと思う。彼らの才能と活躍のおかげで、アメリカ人(といっても一部ですが)と日本人との人種摩擦や誤解がもしかしたら少しは軽減されているかもしれないと思うと、何とも彼らに感謝したい気持ちになる。