Aaron Dilloway @ The Hook


ブルックリンのレッドフック地区の〈The Hook〉で、昨日は〈No Fun Festival〉の続編ともいえるイベントがありました。写真は〈ウルフ・アイズ〉のメンバー、アーロン・ディロウェイのソロ。もしやメゴのピタに匹敵するほどの大物かも…と思わせる、自作マシンによるすさまじいエレクトロニクスのライブでした。ちなみに先日カナダのヴィクトリアヴィルで開催されたフェスティバルで、アンソニー・ブラクストンが〈ウルフ・アイズ〉のステージに飛び入りして共演したとか。ブラクストン氏も〈ウルフ・アイズ〉を「過去20年に現れた最も刺激的なバンド」と絶賛しているらしい。最近のミシガン出身の若いミュージシャン、逸材多しです。これから要注目かも。

Aaron Dilloway solo

The Hook in Brooklyn

ここで他の写真もスライドショーで見られます。

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今回の某雑誌発行のムック(『No Waveエスクァイア・ジャパンより7月発行予定)では、イーストヴィレッジはもはや過去の伝説を懐かしむノスタルジックな場所に過ぎなくて、この5,6年の間にリアルタイムで面白い音楽が生まれつつあるのは、ブルックリンのウイリアムスバーグ周辺なのだというようなことを、若いミュージシャンのインタビューなども含めてつらつらと書いてみました。ジョン・ゾーンの影響とは違うところで、今確実に何かが生まれつつあるニューヨークの新しい音楽シーンの真実について、前々から書きたいと思っていたことをいろいろ書けてよかったです。

80年代以降からずっと、ニューヨークの実験的な音楽というと、いつもゾーン周辺に焦点が当たりすぎていて(というかそれがあの人の戦略だったのでしょうけど)、実際にニューヨークのどこかで生まれつつあった新しい音楽のシーンというのがほとんど注目されていなかったというのを、今回の取材を通して実感しました。80年代の残り火のようなゾーン周辺の音楽だけを聴いていると、ほんとニューヨークはつまらなくなったよなあ…とずっと感じていたのですが、今回ブルックリンのノイズロックバンドを中心とする75年前後生まれの新しい世代の音楽をいろいろ聴いてみて、いやこれこそが〈No Wave〉の自由な創造精神と沸々と煮えたぎるエネルギーを受け継ぐニューヨークならでは音楽なのだと実感しました。80年代からニューヨークのダウンタウンにある種の伝説的なコミュニティを作り上げたゾーンの功績は素晴らしいと思うのですが、その一方で、ニューヨークの実験的な音楽の発展すべき方向をある意味で(彼の好みの範囲に)限定されてしまったような気もするし、ゾーンの影響から抜けきらなければ真のオリジナリティを確立できない、ゾーン好みの(コブラ的)演奏から抜け出せないミュージシャンたちの苦悩なども間近で見ていると、うーん…と首を傾げることも多々あり、そういう疑問も含めて、別の角度からニューヨークの音楽シーンを見つめ直す時期なのではないかと思うこの頃です。