Glenn Branca

yukoz2005-05-09

グレン・ブランカの大編成オーケストラによる「Symphony」初期の作品をまとめて聴き込む一日。

「Symphony No. 6」(写真)は、ギター10人(1人はベースも兼)とドラムス1人という大編成で、10個のギターの弦の音が、不協和音と和音の微妙な中間を縫うような厚みのあるサウンドを生んでいるのだけど、耳障りだとか音数が多すぎるというような印象はまったくなく、むしろ全体の質感は柔らかで温もりのようなものすら感じられる。ドラムスのロックのビートが、とても歯切れのよい爽やかなグルーヴを生んでいて、そこへ10人のギターのオフビートのリズムが重なるところなどは、とてもかっこいい。ロックとアブストラクトの中間を漂うような、音楽とノイズ、安定と不安定のぎりぎりの境界線を保っているようなバランスが見事。

1981年にソーホーで録音された16人編成の「Symphony No.1」は、ソニックユース結成以前のサーストン・ムーアとリー・ラナルドもギタリストとして出演している。No.6よりもシンプルな音楽なのだけど、今にも噴き出さんばかりの初期的なエネルギーが生々しく感じられてとてもいい。ロックという音楽が単なる衝動のはけ口ではなく、何かとても崇高なものに高められたような気がする作品だ。

こういうのを聴いていると、70年代後半から80年代にかけてのニューヨークには、たしかにマグマのようなものすごい音楽のエネルギーが充満していたのだなあと実感する。この時代に起きたNo Waveのムーブメントというのは、ほんとに巨大な津波のようなパワーをもっていたのですね。こうしてCDを聴き込むだけでもそのパワーをありありと感じるのだから、あの当時にニューヨークでこういう音楽のライブを目の前で聴いていた人たちというのは、一生分のエネルギーをもらったのではないかとすら思う。その時代の強烈なエネルギーにあたって、その後はもぬけの殻のようになってしまった人もいるらしいけれど、そういうのも少しわかる気もする。

99年の夏に初めてニューヨークを訪れたときは、このロウワーイーストサイドのシーンというのは、すでに巨大なエネルギーが燃え尽きた後に残り火がくすぶっているだけみたいな状況だったのだけど、そのくすぶりさえもがとてつもない強烈なエネルギーを放っているように感じられたし、そのことを思うと、No Waveの渦中のニューヨークの凄まじさというのが想像できる。いやあ、ほんとにものすごい時代だったんですね。