Black Dice ”Creature Comforts” (2004)


NYブルックリンを拠点に活動する、新世代No Waveシーンの旗手ともいわれる Black Diceの最新作。メンバーは、トーキングヘッズのメンバーたちも在学中に音楽を始めたという「ロード・アイランド・デザイン学校」の出身者たち。現代のアート畑出身のノイズロックバンドだ。

一つ一つの部屋にそれぞれ違うテーマのインスタレーションが施されたギャラリーのうねる空間を、次から次へと巡り歩いているような、そんな感じがする音楽だ。様々に形や感触の違う素材で構成された立体的なアートのインスタレーションを体験しているよう。感触の違うそれぞれの音が立体的に脳を刺激する感じが、とても気持ちよい。90年代後半のメゴの実験的なサウンドを思わせるエッジのある重低音やメタルノイズが見え隠れするのだけど、ロックのビートや和音や人間のヴォイスやループ効果がところどころに挿入されて、アブストラクトになりすぎない音楽的な調和をぎりぎりのところで保っている。メロディアスなメゴという感じもするのだけれど、ヤワでポップなエレクトロニカとは違う、れっきとしたアートとしての凛とした姿勢が全作品を貫いている。音の構築の仕方や扱い方は、いわゆる音響・即興シーンのミュージシャンたちほど繊細で洗練されてはいないものの、今のアメリカの新しいノイズロック世代の息吹というか、自分たちの音楽を開拓していこうとするポジティブなエネルギーに溢れていて、そのエネルギーと未知の可能性に注目したいバンド。