日本語の美しさ


インターネットのラジオジャパンで聞くNHKのアナウンサーの声は、冬の早朝の湖面にさす最初の光のように凛とした清々しさに満ちていて、日本語とはなんと清楚で美しい言葉だろうとしみじみ思う。日本のテレビで毎日聞いていた時には気にも留めなかった事実なのだけど、そういう発見があるからこそ、アメリカに来てよかったと思う。せっかくたまに日本語を話す機会があっても、日本語で言いたいことをうまく説明できなくてしどろもどろになってしまうことがあるけれど、それでもやはり日本語の話し方は忘れたくない。

目下アーストワイルで制作中のキース・ロウと中村としまるのデュオ作品(昨年7月にウィーンで録音)も、これと似たような凛とした清々しい空気に満ちている。いつも思うのだけど、この2人の演奏はマイナスイオンの空気清浄器のように脳の中のよどんだ空気を一掃してくれる。アメリカという国に住むようになってから、騒がしい環境に対する反動のせいか、彼らの凛とした姿勢を貫くシンプルな音色が余計に好きになった。

いつか西フランスのキース・ロウ宅を訪れた時には、キース夫妻と料理ごっこをしようと計画している。一日目はキースが市場に行って材料とメニューを決めて料理を作り、翌日は私が市場に行って材料とメニューを決めて料理を作り、どっちがおいしいか決めようという「料理の鉄人」日仏しろうと実践版である。ちなみに言い出したのはキース・ロウ氏。西フランスの市場というのは毎朝ものすごく新鮮な食材がずらりと並ぶのだそうで、ロウ夫妻はいつもその日の朝に市場に行き、今日はこの素材が新鮮でおいしそうだから昼食と夕食はこれこれを作ろう、という風にその日一日の献立を決めるのだという。なんだかとても面白そうなのだけど、今はお金がないから実現するのはたぶんずっと先のことになりそう。もし新鮮なペコリーノ・チーズが見つかったら、チーズと黒こしょうをたっぷり使ったパスタ「Cacio e Pepe」を作ろうかと考えている。これは実は素材さえ新鮮であれば必ずおいしくできるという簡単レシピでもある。(レシピは<a href="http://d.hatena.ne.jp/yukoz/20060206">こちら</a>)