4 gentlemen ミキシング完了!

yukoz2005-04-25

アーストワイルから初夏にリリース予定の Keith Rowe / Oren Ambarchi / Christian Fennesz / 中村としまるのカルテット2枚組の最終ミキシング盤を聴き込む。カルテット名は、4g (= four gentlemen of the guitar の略)。昨年のヨーロッパ・ツアー中のライブ録音の中から、フランスのナンシーでの演奏(disc 1)とパリでの演奏(disc 2)を収録したもの。この2枚組は、アーストワイルの過去のCDの中でも最高の作品の一つとなるかも。

あたかも4つの並んだテレビに映し出される異なる4つの映像を眺めているうちに、いつしかその異なる映像が実は同じひとつの風景の一部を映し出していることに気づかされるというような、不思議な融合感のある演奏だ。disc 1は、キース・ロウと中村としまるの無機的で静的なサウンドの上に、フェネスのラップトップから生まれる低周波が重力を思わせる揺らぎを与え、さらにオレン・アンバーチのギターの低音が静かに波紋を投じていく。アンバーチとフェネスが生む夢のような浮遊感と、ロウと中村の音が生む現実的な安定感が、音楽に多次元的な深みを与えている。広大な自然に息づく原始の命の鼓動を思わせるアンバーチのギターのエコー音と、そこに時折色彩を添えるフェネスの電子音(ソロの時とは違ってとても控えめ)、そしてロウと中村の楽器から静かに淡々と生まれ続ける無機的なサウンドとのコントラストが絶妙だ。

ソロ奏者としてはかなり個性の強い4人のミュージシャンだが、このカルテットでは各々がその存在感を最小限に抑えているのがとても興味深い。特にキース・ロウは、あたかも音楽の背後に身を潜めるかのような控えめなサウンドで、いわば他の3人のサウンドを立てるような存在となり、音楽全体のまとまりを生んでいる。4人の音が次第に高まり圧倒的な低音を響かせているときでさえ、そこには不思議な安らかさがある。まさに「4人のジェントルマン」と呼ぶにふさわしい清廉さが音楽を貫いている。中村としまるさんによるミキシングの音の仕上がりも、低周波から高音までがとても美しくパワフルに再現されていて絶品。

アーストワイルでは、昨年からカルテットの音楽に焦点を当てて、他にもキース・ロウ/中村としまる/大友良英/Sachiko Mのカルテットや、ピーター・レーバーグ/フェネス/大友良英/Sachiko Mのカルテットなど、今まで共演したことのない演奏者による共演がとても面白い音楽を生み出してきたけれど、今回のキース・ロウ/オレン・アンバーチ/フェネス/中村としまるのカルテットも、今後さらに演奏を重ねるにつれて、ますます面白い音楽を生み出してくれそうな予感がする。(写真は昨年5月のベルリンのAMPLIFYより。)