yukoz2005-04-20

ErstLive005、日本のCD店にもそろそろ入荷し始めていると思います(右の写真)。Improvised Music from JapanのサイトのCDショップにも入荷したようです。世界の即興シーンの最先端にいる4人のミュージシャンの3時間50分に渡る即興演奏、興味のある方はぜひチェックを!

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前にここでも紹介したウィーンのkarate joeから出ているmimi secueの「forst」は聴き込めば聴き込むほど好きになる愛聴盤。ウィーンのミュージシャンが作るメロディーラインの美しさには比類のないものがある。深い情緒がありながらも過度なエモーションに陥ることなく、シンプルな構成でありながらもミニマルすぎるとりすました冷たさもない。一見、やわなポップス風にも聴こえるのだけど、よく聴き込んでみると、アコースティック・ギターや枯れた味わいのあるボーカルの一音一音が心の深い部分に沁みていく。心情的にウィーンの音楽に共鳴しやすいという私的な嗜好もあるのだけど、クラシック音楽をバックグラウンドにもつウィーンのミュージシャンならではの美意識と深みがさりげなく音楽の背後にあるのがいい。

優しさとか繊細さというのは高く評価されるべきだと思うのだけど、ニューヨークのような荒っぽい社会ではそういう繊細さというのは「女々しい」とバカにされる傾向があるので、ミュージシャンも観客も表面上はタフでクールに振る舞おうとがんばっている人がとても多い。ニューヨーク産の音楽にあまり繊細さを感じられないのも、そういう間違った理想像のためではないかとこの頃思う。少々のことでも動じないタフな神経(無神経ともいえるんじゃないのか)とか、喜怒哀楽をあまり表に出さずにクールに振る舞うのがかっこいいというのがアメリカやニューヨーク的気風なのだけど、音楽ってそうやって演奏したり聴くものじゃないでしょと思ったりもする。

アメリカという国に慣れれば慣れるほど、ニューヨークという場所に浸れば浸るほど、ウィーンのミュージシャンの音に対する繊細さや凛とした一音の深みに心を惹かれていく。素直さとか朴訥さから生まれる美しいものを無性に懐かしく思うのが、ニューヨークの生活なのかもしれない、などと思ったり。