Ken Vandermark Trio (w/John Herndon, Christof Kurzmann) at The Stone, NYC


ライブと言えば、同じく4月3日にNYの〈ザ・ストーン〉で、シカゴから来ていたケン・ヴァンダーマーク(reeds)のトリオのライブも観ました。メンバーは、〈トータス〉のドラマー、ジョン・ハーンドン(ds)と、ウィーンのクリストフ・クルツマン(electronics)という異色の組み合わせ。フリージャズ系のライブはめったに聴きにいかないのですが、これは面白かったです。

シカゴのフリージャズ・シーンというのは、個人的にはライブを聴いたことがほとんどないので、これといった先入観を持たずに聴いたのですが、ケン・ヴァンダーマークのサックスやクラリネットはフリージャズといえども、どこかカチッとした決まり事を守っているような安心感があり、確かな技術に支えられつつ自由に吹いているという感じが気持よかったです。どこへ向かうか、何が飛び出すか分からない、というような驚きや刺激はないにしても、フリージャズ独特の、あの呪術的なパワーにいつしか別の世界へ連れて行かれるような感覚も味わえたし、こういう(妙な言い方ですが)きちんとしたフリージャズというのも、たまにはいいものですね。

ジョン・ハーンドンのドラムスも、ロックの切れの良さが心地よい、好みのタイプのビートでした。〈シカゴ音響派〉と呼ばれるのでしょうか、あの界隈の人々は。マーティン・ブランドルマイヤーの叩きをふと彷彿させる瞬間もあったけれど、やはりセンスの良さと音の深みでは、ブランドルマイヤーの方が一枚上手でしょうか。ブランドルマイヤーの場合は、ドラムの叩きから〈内面の声〉が聞こえてくるので、やはりあれは特別です。

クリストフ・クルツマンのラップトップの電子音も、予想した以上にフリージャズの演奏にぴたりと合っていました。クルツマン本人が長年のジャズ・ファンでもあるせいか、ケン・ヴァンダーマークの向かう方向にぴたりと寄り添っていて、電子音の違和感を全く感じさせなかったのが凄いです。具体的には、サックスやクラリネットから出る音と同じ周波数の質感の違う音をラップトップから出していたり、ドラムスの叩くビートと絡み合うような重厚なベース音を出していたり、表立った音を出すというよりも、アコースティックな楽器の音を殺すことなく、音楽の厚みをあくまでも自然な感じで出しているという印象でした。それにしても、フリージャズ演奏者のように、リズムに乗って体や足をぐらぐら揺らしながらラップトップを演奏する人というのを見たのは初めてだったので、それも面白かったです。

ちなみに、〈ザ・ストーン〉の観客は満員。その他のNY市内のクラブでのライブも、チケットが売り切れで満員だったそうです。