The Magic I.D. のLPテスト盤試聴


The Magic I.D. の新譜「till my breath gives out」のLPテスト盤がプレス会社から届いたので、早速試聴してみました。アーストワイルで作った初めてのLPなので、喜びもひとしおです。スピーカーとヘッドフォンの両方で試聴しましたが、アコースティック・ギターやボーカルの音に温かみと深みが感じられて素晴らしく、クラリネットの音も一層ふくよかに柔らかく聴こえ、CD用の音源を聴いていた時よりも、さらに音楽全体に膨らみと統一感が感じられるように思いました。

部屋の空気と音楽が溶けて一体になる、LPならではの音の広がりと豊かさというものに、改めて感銘を受けています。LPで果たしてどこまで再現されるのだろうかと心配していた電子音の微妙なニュアンスや立体感も、予想以上にしっかり出ていました。エンジニアのクリストフ・アマンの配慮により、LP用のマスタリング(CDとは違うらしい)というのを施してもらった効果もあるのかもしれません。何よりも、LPをジャケットから取り出して、注意深くターンテーブルに乗せて針を落とすという一連の手順に、ある種の儀式的な神聖さが感じられて、子供の頃にLPを聴いていた時の胸の高鳴りのようなものを、久しぶりに再体験できたのも嬉しいです。LPを手にした時に、「音楽の重み」のようなものをずしりと感じられたのも感動でした。ついでに、ヘッドフォンで、Thrill Jockeyから出ているラディアンのLPと聴き比べてみたら、こちらの方がずっと音質が良いので大満足。さすがアマン・スタジオ。

CDとLPは2月19日にリリース予定です。(※印刷会社の手違いがあり、リリース予定日が延期になりました。)


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■The Magic I.D.「till my breath gives out」(ErstPop001)

ErstPopの第1弾は、ベルリンを拠点に活動するカイ・ファガシンスキー、マーガレット・カマラー、クリストフ・クルツマン、マイケル・シーケが結成したグループ「The Magic I.D.」による初アルバム。アコースティックギタークラリネット2本、エレクトロニクスという異色の編成による演奏をバックに、マーガレット・カマラーとクリストフ・クルツマンのボーカルが重なる。音の微妙な「ずれ」や「揺らぎ」が、危ういバランスをとりながらポップスと実験音楽の狭間を行き来する。そこかしこにエッジの見え隠れするサウンドと、古いジャズボーカルを彷彿とさせる温かみのあるサウンドが融合した作品。カバーとインナーの絵は、ベルリン在住のデザイナー、Marion Gerthによるアートワーク。2006年11月16日、ウィーンのアマン・スタジオで録音。ミキシングとマスタリングも同スタジオ。