音楽の聴かれ方

ミクシィで北里義之さんが音楽評論についての面白い考察を書かれていたのを読んだ。北里氏の文章は、音楽評論としてだけでなく、読み物としても大変面白いので、時々ミクシィを訪れて読みにいく。というか、ほとんどそれだけがミクシィに入っている目的だったり。

「音楽」というのは、人の心に届いて初めて価値が現れるものだと思っているので、個人的には、批評家によって書かれた月並みなレビューよりも、一般の個人リスナーの反応の方が大きな意味を持つと思っている。北里氏の評論のように、個人的な深いレベルで音楽と向き合いながら書かれた文章には信頼を持てるけれど、そういう音楽評にはめったにお目にかかれないのが残念。なので、いわゆる雑誌に載っているような音楽評は、この数年ほとんど読んでいないけれど、一般の、といっても特定の国内だけでなく、世界各地の個人リスナーの反応を見ているのはかなり面白い。

ちなみに、アーストワイルのCDの売り上げ状況を見ていて面白かったのは、ErstPopの「The Magic I.D.」の売れ方。これは、アメリカや日本ではあまり売れていないけれど、フランスとイタリアと北欧と南米では2008年度のベスト盤に選ぶ人も多いなど、いまだにじわじわと売れている。(フランスではなぜかLP盤がよく売れる。)アーストワイルの通常のCDは、一般に国や地域とは関係なく、世界各地にぱらぱらとファンがいるので様々な国から注文が入るのだけど、「The Magic I.D.」だけは特定の国や地域に熱烈なファンの分布が見られるのが面白い現象だった。これがフランスとイタリアで人気があるというのは、何となく分かる気がする。国民的な(あるいは人種的な)美意識や好みによって評価が分かれる音楽なのかもしれない。確かに、この音楽には独特の「体感温度」があるので、それがリスナーの聴き方の温度差とも関わりがあるような気がする。

あと先日、ラジオのNPRで「The Breadwinner」がかかった後は、ラジオで聴いて気に入ったというリスナーからの注文が毎日のように入ってきた。NPRなんて一体誰がどこで聞いているんだろう?と思っていたけれど、ラジオの影響は凄いですね、見直しました公営ラジオ。