MIMEO「sight」(2007年/Cath004)


英国のレーベル「Cathnor Recordings」から出ているエレクトロニクス主体の11人編成即興集団「MIMEO」のCD "sight"は、サイ・トゥオンブリの作品にインスパイアされて生まれたプロジェクトらしい。MIMEOのメンバーは、Gert-Jan Prins, Thomas Lehn, Kaffe Matthews, Peter Rehberg, Jerome Noetinger, Marcus Schmickler, Christian Fennesz, Phil Durrant, Rafael Toral, Cor Fuhler, Keith Rowe

このMIMEOの「sight」は、最近珍しく気に入っている作品だ。ヨーロッパ各地に点在する11人のミュージシャンが、個々に60分用のCDRに5分以内の演奏を自由に録音し、その録音を後から11人分重ね合わせたという作品。演奏時間5分に対し、沈黙の時間が55分もあるので、11人全員の演奏を重ね合わせても、全体的に静閑な作品に仕上がっている。(アイディアはキース・ロウによるもの。)

各々のミュージシャンの演奏のタイミングによっては、2人以上のサウンドが重なったり、11人全員が数分間沈黙を保っていたりするのがとても面白い。ミュージシャン同士が、同時にその場で「共演」したわけではないので、互いの音からの影響を全く受けていない。そのため、通常のMIMEOの大編成アンサンブルの共演にありがちな、時にはノイズのカオスとなる即興演奏とは全く違う、張りつめた緊張感が個々の演奏者のサウンドに漂っている。「5分間に勝負をかける」というような気合いが、一切の無駄を削ぎ落とした毅然とした空気を生んでいるのかもしれない。異質な物がひとつに溶け合うというのではなく、1人1人のサウンドがその際立った個性をきらめかせながら氷のように林立し、ただならぬ気配の中で、異なる色彩を放っているという感じがいい。

http://www.cathnor.com/Cath_004.html