Rumon GambaとBBC交響楽団のモーツアルト


BBCのサイトでRumon Gambaの指揮によるBBC交響楽団のモーツアルトの交響曲を通しで聴けるのを発見。

ラモン・ガンバというイギリス人指揮者の名前は今まで聴いたことがなかったけれど、勢いや瑞々しさ、生き生きとした表現や迫力が素晴らしい。しかし、それだけではなく、豊かに音楽を膨らませる部分や、フレーズをゆるやかに滑らせる部分、音楽の深淵をふとのぞかせる部分など、モーツアルト交響曲に見られる光と影の微妙なニュアンスの変化と各所のツボの聴かせ方を、仰々しくなりすぎずに、さりげなくきちんと押さえている。新世代の躍動感と古典的な優雅さを兼ね備えたような演奏だ。1972年生まれとのことだが、若い指揮者にもこんな凄い人がいるとは嬉しい驚き。ぜひともいつかライブで聴いてみたい。

モーツアルト交響曲は、個人的にはテンポの速いシャープな演奏より、レナード・バーンスタイン指揮のウイーン・フィルの演奏や、フェレンツ・フリッチャイ指揮のウイーン交響楽団*1のようなゆったりしたバージョンの方が、昔レコードで聴き慣れていたせいか一番しっくりくる気がする。ガンバの指揮は、勢いがありながらも、そうしたウイーン風の優雅で厚みのある演奏をも時折彷彿させる。BBC交響楽団の個性もあるのかもしれない。手元にあるチャールズ・マッケラスプラハ・チェンバー・オーケストラの演奏と聴き比べてみると、優等生タイプでおとなしめのマッケラスに対し、ガンバの指揮による演奏は大胆で自由な広がりと瑞々しさが全編に満ちていて、退屈さが全く感じられない。元気な演奏と言っても、シャープすぎて深みと厚みに欠けるような気がするネヴィル・マリナーの指揮による演奏はあまり好きではないのだけれど。

話は飛ぶが、トレヴァー・ピノックとイングリッシュ・コンサートによる古楽器モーツアルトは、テンポの速さに「え?ほんとにこんなに速くていいの?」と驚きつつも、たまに聴くとチェンバロの柔らかい響きや演奏のシンプルさに新鮮さと瑞々しさが感じられて、結構気に入っている。去年の今頃、11枚組のボックスセット(交響曲全集)をネットショップで60ドル位で買って、よく聴いていた。この中の交響曲を順番に聴いていくと、モーツアルトの初期の交響曲バロック音楽に近かったのが良く分かる。モーツアルトの話になると時間を忘れて熱く語り続けるスティーブ・スミス*2によると、このピノックとイングリッシュ・コンサート古楽器による一連の交響曲が、当時モーツアルト自身が作曲しながら頭の中で思い描いていた演奏に最も近いのではないかという話だ。ちなみに、古楽器オーケストラだと、こんな感じの編成になるらしい。

それにしても、ニューヨークでは、ちょっと有名なクラシック演奏家のコンサートとなると、半年か1年以上前に予約しておかないとチケットが売り切れてしまうことが多いので、なかなか聴きに行けないのが残念。

*1:古い記憶なのでこの2つを混合してました。よくLPで聴いていたのは後者。CDでは、後者の入手が難しかったので、前者を買い直してよく聴いていました。

*2:NYタイムズのクラシック欄担当の評論家