木枯らし1号


東京で木枯らし1号が吹いたというニュースを読んで、思わずバッハの「G線上のアリア」が聴きたくなったのは、記憶のどこかで冬の最初の日と結びついている音楽だからだろうか。

2週間、日本に帰ってみて、ああ日本のよさってこういうものだったのかと生まれて初めてその本当の深さに触れた気がした。垂直的にまっすぐに底のない深みに降りていく、自分のルーツに触れるというのはこういうことだったのかと。生まれてこのかた、これほど「日本」の深さを見たことはなかったかもしれない。いや、子供の頃からどこかでその深さを感じながらも、ただ単に気づかなかっただけかもしれない。外国で暮らさなかったら、たぶん一生見えなかったかもしれない日本という国の細やかな美しさに、こうしていつか開眼することができたというのは幸運なことなのだろうとしみじみ思いつつ、アメリカに戻ったら2日後に永住権が認められたというのも、不思議な成り行きだなと。それにしても、どうしてアメリカには本みりんがないのか。いり豆腐を作ってみたら、どこか日本で作ったのと味が違うけど、このほのかに仕上がりを台無しにしている人工的な風味はどうやら「みりん風調味料」のせいだと判明。丸大豆醤油もごま油もニューヨークの日本食スーパーで買えるのに、本みりんはいったいどこに売っているのか。

写真は、3年前に撮ったウィーンの冬の夜明け時。ウィーンの街は早朝と夕暮れ時に深い青に包まれるのが不思議。