フェスティバルの感想


アメリカには(そしてニューヨークにも)、ウィーンの電子音響ミュージシャンや日本の即興ミュージシャンの音楽のよさをわかる人なんて、あまりいないだろうなあ…と、日頃から騒々しくてラフな人々に囲まれて暮らしながら、ほとんどあきらめていたのだけど、だからこそ、こういうNYみたいな場所で、そういうラフな観衆の前で、ああいう音楽を演奏してもらえたら、少しは空気が浄化され世界が変わるんじゃないだろうかと期待していた。まあ、そう単純にはいかないだろうけれど、それでも初めてライブで聴いた日本やウィーンのミュージシャンの演奏に、心を動かされた観客も確かにいたし、私と同じように彼らのライブを聴けるのを心待ちにしていた人たちの存在も知って嬉しかった。アメリカやニューヨークの乱雑さがきらいな人は、もちろんここにも(少数かもしれないけれど)確かにいるし、そういう人たちにとって、ウィーンやベルリンや日本のCosmosみたいな純然とした(うまい表現が思いつかないけれど、私にとっては真実に近い、”突き抜けた”)演奏を聴くことは、大きな「救い」になったと思う。彼らの演奏を聴いて、自分を取り戻せたような気がするし、アメリカに来てからほとんどあきらめていた、でも実は絶対に自分の中で消えてしまえない「何か」の存在というのを強く実感した。2004年のベルリンのAMPLIFYフェスティバル以来、そういう風に音楽に動かされたのは初めてだと思う。それにしても、ウィーンの電子音響が好きな人、こっちにはほんとに少ない(というかほとんどいない)んですよ。悲しいほどに。たまに、ちらほらとまばらにいるのが救いなんですけど。


今回のフェスティバルで撮影したクリストフ・カルツマン/吉田アミの写真と2004年にベルリンのAUSLANDで撮影した「schnee」の写真が、「WIRE」誌のクリストフ・カルツマン特集に載るそうです。


…フェスティバルの間、アーストワイル本部に出演者やファンなどいろんな人が寝泊まりしたり出入りしたりしていたのですが、誰かここにヘッドフォン(ソニーノイズキャンセリング)を置き忘れていった人がいるようです。初日に日本から到着したついでにふらりと立ち寄ったオハイオ・ゾンビのマイク・シフレットか、最終日にオスロから到着した後にここで仮眠をとってライブに直行したジャズカマーのジョン・ヘグレか、昨日の早朝、半睡状態でタクシーに乗り込んで慌てて空港へ向かったカイ・ファガシンスキーかクリストフ・カルツマンか、または2日目にキース・ロウの油絵の原画コレクションを見に来たファンのグループの誰かか。ノイズキャンセリングのヘッドフォンなしで飛行機に乗るはめになった人がいたとしたら気の毒です。