Greg Kelley Solo@The Tank, NYC

トライベッカの〈ザ・タンク〉というライブスペースで、4月3日にボストンから来ていたグレッグ・ケリーのソロ演奏を聴いた。ここは、〈コレクティブ・アンコンシャス〉という名前の小劇場スペースも兼ねていて、最近、地下の小スペースでも実験的な音楽や即興系のライブをやっている。

グレッグ・ケリーは、いわばアメリカ社会の表面を分厚く覆う偽善や愛想笑いやコマーシャリスティックな仮面を剥ぎ取った後に、初めて見えてくる狂気とでもいったものを、素のまま表現できるトランぺッターだと思う。以前から、アーストワイルのフェスティバルで彼のデュオやトリオを何度か聴いていたのだけど、「素のまま」といった感触のサウンドから伝わる粗野な感じが、アメリカの荒っぽさ(渡米当時は特に敏感に反応していた側面)と重なって感じられていたせいか、今まではあまりぴんとこなかった。でも今回ソロを初めて聴いてみて、この人の演奏の良さがようやくわかったような気がする。ある意味で、アメリカという国を深く知ってみて初めて理解できる価値が、この人の音楽の根底にはあるのかもしれない。アクセル・ドゥナーがヨーロッパ的な狂気を表現できるトランぺッターだとすれば、グレッグ・ケリーはまさにアメリカ的な狂気を表現できるトランぺッターだと思う。

というわけで、久々にニューヨークで聴いて良かったと思えるライブだった。