久々にウィーンの話


エディションズ・メゴ(元メゴ)とも関係のあるウィーンのDVDレーベル「index」から、ウィーンの実験映像作家のDVD作品がいろいろ出ているので、ウィーンが懐かしくなるとよく観ている。モノクロ映像もカラー映像も、とても奇妙で不穏な空気に満ちた作品ばかりでとても楽しい。

東京やニューヨークでは、たとえ深夜を過ぎて人通りがなくなっても、やがて朝が来れば通常の街に戻るだろうというような、24時間街がしっかり機能を続けながら現実と密着しているというリアルさがあるけれど、ウィーンという街は、深夜を過ぎて人の気配がぱたりと消え、街が静寂に包まれると、いつしかほのかな街灯に照らされたショーウインドウの中でじっとしていたマネキンが動き出すんじゃないかというような、ふとした瞬間に現実と非現実の世界が入れ替わってしまいそうな不思議な雰囲気がある。透明な狂気、とでも呼べそうな、あのただならぬ気配とシュールな感覚は、ウィーンの実験音楽や映像作品に漂う不穏な空気とどこか共通しているといつも思う。