テレビという日常的な媒体に普通なら映るはずもない不思議な映像と音


目下アーストワイルで制作中の新譜のうち、中村としまるの音楽とウィーンの映像作家ビリー・ロイツの共作によるDVD作品を今見ています。このデュオ作は、音楽と映像のコラボレーションにありがちな、映像が音楽を邪魔するような感じや映像と音楽が別々のことをやっているような不自然さがまったくなく、優雅な二人三脚を見ているようにぴたりと呼吸が合い素晴らしくバランスの取れた、それでいて鋭いエッジのある作品です。

もし音が目に見えるものだとしたら、映像が音を発するものだとしたら、こんな世界があるのかもしれない。ミニマルなのに無機的というのではなく、息づかいや鼓動や柔らかな質感が伝わってくる音と映像のデュオ。幾何学的な直線のつらなりとグラデーションが、ふと広大な砂浜に打ち寄せる静かな波に見えたり、夜明けの水平線に見えたりと、自然界の営みと大きな時間の流れを彷彿させたりもする。テレビという日常的な媒体に、普通なら映るはずもない不思議な映像と音。ビリー・ロイツは同じくウィーンのDieb 13とのデュオでよく観ていたけれど、彼女の最小限の線と色で構成されたシンプルな、それでいて詩的な趣のある内省的な映像と、中村としまるの音楽はぴたりと合っていて、とてもいいDVD作品になりそう。

このDVDと同時発売になる予定の Dieb 13とErikMのデュオも、先日ウィーンのアマン・スタジオで無事レコーディングを終え、本人たちの話では「最高の作品ができた」とのことなので、とても楽しみ。その次のキース・ロウ+中村としまるのデュオの方は、キースによるカバーの油絵(ブルックリンのレッドフック地区の写真2枚をもとに描いた絵)がほぼ完成したそうで、こちらも本人がとても満足しているとの報告。ちなみに、DVD以外の新譜3枚は、すべてウィーンのアマン・スタジオで録音されています。アーストワイルの今後のリリース予定は↓

■047: Dieb13/ErikM ■048: AVVA DVD (中村としまる/Billy Roisz) ■049: 吉田アミ/Christof Kurzmann ■050-2:(double CD): Keith Rowe/中村としまる "between"