Fennesz @ moving patterns


NYのaustria cultural forum のイベント「Moving Patterns - electronic music and beyond」でのフェネスのソロ。

Christian Fennesz (laptop, electric guitar)
visuals by Jon Wozencroft

                                                                                                  • -

Jon Wozencroft (touchの写真家)による水の映像をバックに、「Venice」の続編ともいえる水のイメージを彷彿させるフェネスの新作を演奏。時折エレキギターの生演奏が入り、最後は「Venice」からの楽曲でしめるという構成。このエレキギターの入る部分が、あたかも音楽の心臓の鼓動が伝わってくるみたいな迫力があって、とてもよかった。フェネスの音楽というのは、狭いスペースの中で演奏されていても、その果てしない想像力でどこかものすごく広がりのある大きな場所に空間移動させてくれるような錯覚がある。

Jon Wozencroft の「水」の映像は、時折アブストラクトな色彩とイメージが流砂のように流れる部分などは、フェネスの音楽とマッチしていてとてもよかったけれど、たまにこの写真家らしいリアリズム的な映像になると、フェネスの音楽のイマジネーションを狭めてしまうような感じがして、場面によっては目を閉じてフェネスの音楽を聴いている方が、自由なイメージが心に浮かんできて、音楽の微細な変化をもっと味わえるような気がした。フェネスの想像力に匹敵しうるほどの想像力を持ち合わせた映像作家というのは、まあいないのだろうなとも思いつつ。

こういうラップトップ音楽と映像のコラボレーションというのはよく見かけるけれど、たいていどちらかの作品が抜きん出てよすぎて、もう一方の作品が色あせて見えてしまうことが多い。美意識と想像力を同じレベルでもっているアーティスト同士でないと、こういうコラボレーションはうまくいかない。touchレーベルのカバーを手がけているこの写真家の写真は、どちらかというとリアルな風景描写の美しさでは卓越しているけれど、アブストラクトな映像作家のもつ自由奔放な色彩感覚というのはないので、フェネスの音楽を映像で表現するにはやや役不足という気がした。というか、フェネスの音楽に表現される多彩なイメージを完全に映像化することなど、そもそも無理なのかもしれない。でも上の写真でとらえた部分の水の映像に関しては、とても美しかったです。