ピーター・ラインハルトはやはり凄い

半年ほど前にパン作りを始めてから、バイブルとして読み込んでいる『The Bread Baker's Apprentice』(上の写真)の著者ピーター・ラインハルトが、今月新しい本を出すらしい。早速アマゾンで探してみたら、NYの有名イタリア料理シェフ、マリオ・バターリ氏による絶賛紹介文が載っていた。私が常日頃からラインハルト氏について思っていたことと全く同じことが述べられていたので、ここに和訳を。

ピーター・ラインハルトは、パン作りの世界におけるレオナルド・ダ・ビンチだ。彼のレシピは、誰にでも真似できるわかりやすいものだし、パン作りに関するリサーチは徹底的に網羅されており、読み物としても楽しめる。パン作りの知識と技術に対する彼の渇望は尽きることがなく、無限だ。パンとして焼かれるあらゆる美味しいものに関して言えば、彼は疑いなく正統派のスタイルと情報を我々に紹介してくれる最も信頼できる人物である。あらゆる「発酵もの」と「サンドイッチを作れるもの」に関していえば、彼は私が最も頼りにしている男だ。(マリオ・バターリの推薦文)


このピーター・ラインハルトの人気本『The Bread Baker's Apprentice: Mastering the Art of Extraordinary Bread』は、家庭のオーブンでも、プロのパン職人が作るような美味しいパンを焼けることを証明してくれている。一晩、冷蔵発酵させるなど時間をかけるレシピがほとんどだが、手間自体は意外と簡単で、レシピの指示通りにやればほぼ必ず美味しいパンが焼ける。通常のレシピ本は、あまり信頼していないのだけど、この人の本だけは100パーセント信頼できると思う。(ちなみに、この本の表紙の日本人女性は、現在代官山の「dessert bar F」という店のパティシエをしている方のようです。)美味しいパンとはいかなるものか…を徹底追求したラインハルト氏の魂の遍歴ともいえる文章は、フランス各地のパン職人を訪ねてパン作りの極意を学び取ろうとしたエピソードなども含めて、読み物としても引き込まれる。少々大げさな喩えかもしれないが、もし神の手によって作られるパンというものが存在するとしたら、こんな味と香りと食感になるのではないか…と思わせるような美味しいパンが、この本のレシピに従うと出来上がる。パン作りとはアートなのだな…と実感させられる一冊である。

下記は、ピーター・ラインハルトの3冊の本のレシピをもとに作ったパンの写真。

□サンドイッチ用ロール(ポテトフラワーとドライミルクパウダー使用。バターと卵とミルクの香りが素晴らしい。)


□イタリアン・ブレッド(フランスパンに似た香りと味で、フランスパンより薄めのパリッとした皮で、中身はふわっと柔らかい。)


□イングリッシュ・マフィン(マフィン型などなくても作れる。パンケーキのように、生地の両面をフライパンで5分ずつ焼いて焦げ目をつけてから、オーブンで5、6分焼くだけ。意外と簡単にできるのに、市販のものより数倍美味しい。)


□ベーグル(生地を成形してから冷蔵庫で一晩発酵させるのがポイント。「今のNYにはもう昔ながらの本物のベーグルを売っている店などない」と嘆いていたアール・ハワード(サックス奏者、エンジニア)夫妻が、このベーグルを食べて「おお、これは本物のベーグルの味だ…」と感動していた。)


ライ麦パン(同氏による別著書『Crust and Crumb: Master Formulas for Serious Bread Bakers』からのレシピ。天然酵母ではなくイーストで作れるバージョンなので簡単です。)


□White Shrimp Pizza(同氏の別著『American Pie: My Search for the Perfect Pizza』に載っているニューヘイブン名物のアサリのピザのレシピをもとに、エビを代用。ピザストーンを使い、500Fで10分焼く。フレッシュ・モッツァレラ、ペコリーノ、グリエールなど3種のチーズを使うと美味しい。)


この他、フランスパンや、イタリアのCiabattaなどのレシピも載っています。本のレシピを読んで、「これなら自分にもできるかも…」と思わせてくれるところが、この人の本の凄いところです。フードプロセッサーで生地をこねる場合のコツと注意点とか、発酵状態の見極め方とか、細やかなアドバイスが満載です。在米の人には特に、小麦粉やパン作りの道具をどこで手に入れられるかなどの情報が載っているのも役立ちます。