オーガニック鶏の話


行きつけのグルメスーパーが最近、直営の養鶏場で飼育したオーガニック鶏の販売を始めた。アメリカのグルメスーパーというのは、日本のデパ地下の食品売り場の感じに似ているが、値段はもっと手頃で日本の普通のスーパーと同じくらい。


この店の直営オーガニック鶏は、今まで買っていた鶏よりずっと鮮度や味がよくて、直営のためか値段も安い。3ポンドの丸ごと鶏一羽が6ドルという安価で、しかもオーガニックというのは嬉しい。幸せな戸外で日光を浴びながら自由に歩き回り、添加物やホルモン剤や抗生物質は一切与えられず大豆ととうもろこしだけを食べて育った鶏というのは、鶏臭さがまったくなく、脂肪の皮が薄くて肉も引き締まり、色がつやつやしている。一方、狭い鶏小屋に閉じ込めれたまま、添加物や抗生物質を混ぜた餌を強制的に食べさせられて育った鶏は、皮がもたっとしていて脂肪の塊が多く肉も色あせていて、仕上がりもぱさつく感じ。日頃の不摂生と運動不足で投げやりな生活を送っていると人間もこんな風になってしまうのだろうかと、ふと切なく思ったりする。こういう育った環境による鶏の違いを目の当たりにすると、適度な運動と日光と健康な食生活というのがいかに大事なものかを実感する。やはりアメリカに住んでいても、毎朝の小豆入り玄米ご飯と味噌汁とキュウリの海苔巻き+わさび醤油と有機卵の玉子焼きという朝食だけは続けたいと思う。


丸ごとの鶏を買った日は、ローストチキンにするか、各部位にさばいていろいろな料理に使ったりする。鶏のさばき方というのも、よく切れる包丁とキッチン用ハサミがあれば、さほど難しくなくけっこう面白いもので、二度目位からすっかり慣れて手際もよくなった。(鶏の各部位の成り立ちというのを、アメリカで料理するようになってから始めて知った。)


胸肉とドラムスティックと骨付きもも肉はフライドチキンやタンドリー&カレー用に使い、ささみの部分は後日の親子丼用に冷凍保存し、手羽先はこれまた後日の名古屋風手羽先揚げ用に冷凍保存し、残った背骨とガラは大鍋で野菜やハーブと煮込んでチキンストックにし、後日のジャンバラヤやチリなどに使うなど、たった6ドルでいろいろな使い道がある。もし一緒についてきたレバーが新鮮そうだったら、鶏を各部位ごとにさばいている20〜30分の間、冷水につけて血抜きし、たっぷりのネギやニラと炒めてレバニラ炒めを作ったりもする。(オーガニック鶏についてくるレバーというのは捨てるのがもったいないくらいきれいな色をしている。)名古屋風手羽先揚げは、下味を何もつけずに2度高温の油で素揚げしてから砂糖と醤油と味醂と唐辛子とニンニクを煮詰めて作った甘辛ダレに絡めて、たっぷりの黒こしょうと白ごまを振るというレシピがとてもおいしそうなので、いつか試してみたいと思っている。そんなわけで、丸ごと鶏はいろいろな料理に無駄なく使えて安上がりだし、切り分けて売られている鶏肉よりずっと新鮮でジューシーなのでとても重宝している。

(※ タンドリーチキンのレシピを下記に追加更新しました。)