yukoz2005-03-27

マンハッタンの2つのオーディオ専門店でスピーカーの試聴をしてきました。1件目はソーホーのブロードウェイ沿いにあるStereo Exchange という店で、ここは主にイギリスのブランドB&Wのスピーカーを扱っている。もう1件はアッパーイーストサイドにある Cosmophonic Soundsという店で、こちらはイギリスやドイツやアメリカの無名ながらも信頼のおける良質のスピーカーを扱っている。

スピーカーの好みというのは人それぞれだというけれど、フロア型のスピーカーは見た目は大きくて本格的な印象があるし確かに低音の迫力はあると思うけれど、音全体がもごっと混ざり合った塊のようになって音質のクリアさがいまいちなので、個人的にはブックシェルフ型(メタルスタンド付き)の方がクリアな音再現とスペース感や開放感が感じられて気に入っている。スピーカーは大きければいいってものでもないと思う。いちばん大事なのは、各音域の音がバランスよくクリアにしっかり聞き分けられると同時に、音楽としてのまとまりや雰囲気も感じられて、その背後にある作り手や演奏者の意図やハートがじかに伝わってくることだと思う。それらのどちらのポイントが大事かとあえて選ぶとしたら後者が重要かもしれない。ということで、1000ドル前後のブックシェルフ型のスピーカーをメインに試聴。

B&Wは800シリーズとCM4のフロア型とブックシェルフ型の2種類を試聴してみたけれど、精密な音の表現と各音域のクリアさはすごいのだけど、クリアすぎて音楽自体の雰囲気とか温かみがあまり感じられないのと、全体的に硬い音の印象があって、あまり耳にしっくりこなかった。このブランドはJBLと並んで最高峰のスピーカーらしいけれど、なんというか眼前に各音域の精密な音の一つ一つをずらりと並べて展示されているような平面的な感じがして、あまり奥行きは感じられなかった。特にフロア型のスピーカーは密閉感というか狭い空間の中に押し込められているような圧迫感があって、聴いていると(音はすごく正確なのだけど)頭が痛くなってきそう。スタンドの上に乗せるブックシェルフ型の805がいちばん自然な音の感じがした。このブランドはクラシック音楽マニアの人たちに特に人気があるそうですね。ちなみにこれは左右合わせて1600ドル。

次の店で聴いたMonitorAudioのシルバーシリーズのブックシェルフ型は、B&Wほどクリアではないものの、音楽の温かみや奥行き、重低音の再現がすばらしかった。特に普通のスピーカーではなかなか再現されない低周波の響きは特筆もので、電子音のドローンとか好きな人にはたまらないかも。ただ逆に、サイン波のような高周波の再現はやや弱い感じがした。

結局いちばん気に入ったのは、2件目で聴いたドイツのブランドASW社のGeniusシリーズ。左右合わせて1300ドルというブックシェルフ型のGenius100(上の写真)を試聴したのだけど、何よりも高周波のサイン波をかなりクリアに美しく再現できるのが素晴らしい。音質も各音域の音が偏りなくしっかりとクリアに再現されて、しかも嫌な硬さとか顔面にぶつかってくる感じはまったくなく、音楽の雰囲気や温かみもしっかり伝わってきた。重低音や低周波の再現はMonitorAudioのシルバーシリーズに劣るけれど、これはサブウーハーを使えば解消されるということで、とりあえず満足。このスピーカーは日本では今年発売されたばかりで、まだあまり話題になっていないようだけど、音元出版主催の「オーディオ銘機賞2005」というのにも選ばれているし、これからきっと注目されるはず。ちなみに店員さんの話では、この店にはよく音楽制作のプロたちが他のブランドのスピーカーを買う目的で訪れるらしいけれど、ほぼ全員が最終的にこのASWの Geniusシリーズのスピーカーを気に入って買っていくとのこと。これってすごいかも。

実際に試聴する前にネットなどで情報を集めて検討していた時は、B&Wなどの有名ブランドの製品にけっこう期待していたのだけど、スピーカーの良さというのは自分の耳で実際に聴いてみないとわからないものだなあとつくづく実感。スピーカーによって得意な音の再現領域はさまざまだし、専門家が推奨する有名ブランドが必ずしも誰もの耳を納得させるとも限らないし、音楽の聴き方によっても好みはいろいろだと思うし、百聞は一見(聴)にしかずですね、ほんと。

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4月から新たにイーストヴィレッジにオープンする「The Stone」のサイトを発見。非営利目的の前衛・実験音楽ライブスペースという主旨を唱っているけれど、ラインナップは今までのトニックの地元常連さんたちが占めているようですね。ニッティングファクトリーがいろいろトラブってトニックが誕生した頃とほぼ同じ顔ぶれの出演ラインナップのよう。どんなクラブになるのか興味はあるけれど、むしろ海外のシーンの電子音響系のミュージシャンも最近よく出演するようになってきたトニックの方にもなんとか存続してもらいたいと思う。