アマン・スタジオ雑感


フェネスのサイトをつらつらと見ていたら、アマン・スタジオ内にあるフェネスの仕事場の写真を発見。そういえば去年の11月にこのスタジオに行ったときに、フェネスがやってきてスタジオの奥の小さな部屋にこもっていたけれど、あれは時期的にちょうど「Venice」の編集作業をしていたのだろうか。当時はまだフェネスの音楽をまともに聴いたことがなかったので、メゴから何か出していた人というくらいのことしか知らなかった。知ってたらどうだということはないのだけど、なんだかもったいないことをしたような気がする。5才くらいの娘さんがスタジオの中をちょろちょろ歩き回っていて、ピアノをぽろろんと弾いてみたりしているのがかわいかった。フェネスのようなミュージシャンを父親にもって育つ少女の人生というのは、いったいどんなものなのだろう。

アマン・スタジオというのは、夕刻になるとミュージシャンがなにげに家族連れでふらりと立ち寄ったりするので、2,3日出入りしているだけでウィーンの音響ミュージシャンのほとんどと顔を合わせられる、ほのぼのとした場所だった。ちょうどレコーディングが一段落する頃合いに、マーティン・ブランドルマイヤーとかブルクハルト・シュタングルとかが「やあやあ」という感じにやってきて、みんなで食事に行ったりカフェに行ったりする。この頃になるとさらにメゴの人たちとか他の人も合流して、すごい大人数になっていたりする。なんというか、60年代や70年代の日本を彷彿とさせるような和気あいあいとした家族的なムードがウィーンの音響シーンにはあって、私はその空気がとても好きだ。フェネスの音楽などを聴いていると、時々「温かいなあ」と感じるのは、そういう場所で生まれている音楽だからかもしれない。作りものではない本物の温かさが、ウィーンの音楽にはあるような気がする。