ホンダのビートその後


この夏はほんとにフェネスをよく聴いていた。聴けば聴くほど、その音楽の完成度と深みが見えてくる。「Venice」はそんな作品だと思う。

あきらめたことで「永遠」になった夢と、あきらめなかったことで「現実」になった夢がある。後者を選んで生きていくのが“生きる”ということなのかもしれないけれど、あきらめた夢が永遠に心の中にあるからこそ、こうして生きていられるような気もする。あきらめた夢が心になかったら、音楽を聴いても、たぶんこれほど強く心を打たれたりしないだろう。どこか遠くの、他の場所から夢みるように眺めている、そんな心持ちが好きだ。

3社の中古車ディーラーとの交渉で、ビートの売却先が決まった。エアコンが不調だったし、まあこのくらいの値段でしょうがないかなという感じだ。それにしてもディーラーとの駆け引きというのはこんなにも疲れるものなのか。思い入れのあった車なだけに、できればこれからも幌の手入れをきちんとしてくれるような車好きの人の手に渡ってほしい。大事に育てた子牛を品評会に出して売られていくときの牧場主の気持ちも、ちょっとこんな感じなのかもしれない。

今夜はまた渋谷でライブの撮影と取材。